• OTON GLASS / オトングラス

    失語症患者の読み書きをサポートするウェアラブルデバイスの提案です。

  • 昨年、父が脳梗塞を発症し、後遺症として言語障害が残りました。会話や歩

    行などは今まで通りでき、見た目では病前と変わらないように見えますが

    思考能力はそのまま「文字の読み書き能力」だけが欠落してしまいました。

    現在は熱意のある先生のもとでのリハビリの継続によって簡単な文字や、自

    分の名前などの読み書きはできるようになりました。しかし、病前と比べる

    と圧倒的に読み書きできる語彙数は少なくなり、読むスピードも遅くなりま

    した。文字を忘れてしまったというより、今まで文字として理解できていた

    「形」を文字として認識するのが難しくなり「文字が読みづらく書きづらく

    なった」という感覚に近いようです。

  • 失語症は、主として脳出血、脳梗塞など脳血管障害や脳外傷などによって脳

    の言語中枢(言語野)が損傷されて起こる言語障害です。障害される脳の部

    位や広さなどにより①言葉の症状②重症度③障害の複雑さの三つが一人ひと

    り異なるため、多様な失語症が存在します。例えば、言葉がでないブローカ

    失語や、言葉が理解できないウェルニッケ失などがあります。父の場合は

    器質性健忘症失語という失語症に分類されます。しかし健忘症失語ひとつと

    っても、ある健忘症失語患者の場合、家の空間内にあるもの、例えば 壁、床、

    椅子…それぞれの抽象的な関係性を呼び起こせなくなり「家の空間内にある

    もの」の名前だけ思い出せないというケースもあります。このように同じ名

    称の失語症をとってもその症状は様々です。(言葉と脳と心 失語症とは何)

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

      

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

  • 失語症は見えない障害と言われています。見た目では障害があると判断しづ

    らいからです。そのため社会的な認知度も低いのが現状です。失語患者数

    日本では50万人、アメリカでは100万人、イギリスでは25万人と推定されて

    います。また先天性の失語症 / ディスクレシアはアメリカにおいて全人口の

    10~20%を占めると言われています。少なくとも3000万人は存在することに

    なります。このように非常に稀な障害というわけではなく、実は世界中には

    多くの失語症患者がいることが分かります。また「読み書きができない」人

    を対象とした場合高齢化によって文字を忘れてしまったシニア / 自分の母国

    語でない海外に住む外国人 / 視力が悪くなってしまった弱視の方も「ある種

    の失語症」と言えるかもしれません。OTON GLASSは父をターゲットユー

    ザーとしていますが私は父のことをユーザーを超え、コラボレーターとして

    捉えています。父と共に作るこのOTON GLASSが多くの読み書きが出来な

    い人の元に行き渡ることを視野に入れ活動しています。

  • 父を対象とした行動観察とインタビューから2つの問題が見えてきました。

    ひとつめは外出時に文字が理解できず不安であるという問題です。例えば病

    院で薬の受付番号が分からず何度も受付に聞きに行かなければならないなど

    一人で外出する必要がある時に文字が読めず困ることがあることが分かりま

    した。ふたつめはリハビリの時間が限られているという問題です。父は週に

    2回、言語聴覚士の先生と言葉のリハビリをしています。日本における言語聴

    覚士の数は圧倒的に不足しています。言語の障害を持つ方が日本に650万人い

    るなかで言語聴覚士は2万2千人しかいません。リハビリの時間がもっと増え

    ればより早い回復が期待できます。

  • 2つの問題を解決する方法として、父の生活の中に自然に溶け込むデザ

    インとインターフェースを持ったウェアラブルデバイスを構想していま

    す。

  • リハビリを加速させる2つの機能があります。

  • ひとつめは「まばたきで読み上げる」機能です。対象物を見て二回まばたき

    することでそれを音声で読み上げる機能です。父は文字を視覚的に理解しづ

    らいのですが、音に変換すれば理解することができます。まばたきという自

    然な動作で実世界に存在する全ての文字を理解できます。また生活の文脈の

    中で文字と音を結びつけることは効果的なリハビリとなります。日常の中で

    リハビリを行うことが可能になります。